『英語がペラペラ』になりたい、という文句がある。ペラペラと聞くと、口はうまいが中身がない人、まるで公園でお弁当を食べていると風が吹いたら一番にさらわれる紙ナプキンみたいな脳みその人、を思い浮かべるし、こんなペラペラの紙切れ一枚で、など否定的な意味でこのオノマトペは使われることが多い。『英語ベラベラ』という言葉も耳にしたことがあるが、艶のあるピンク色に塗られた唇とくちびるの狭い隙間から見える、訓練された細い舌が口内のあちこちをちろちろと動き回っている様がうかんで、どぎまぎしてしまう。『ネイティブ並み』という表現を使う人もいるが、ネイティブに近づくことがよしとされるような言語を測るものさし、に、すこしでも有機的な形を与えるため、母語の外に出て、第二、三言語と共に生きている人がこの世界には実はたくさんいるのだから、『ネイティブに近づきたい』、などのフレーズはとっととまとめて燃やしてしまおう。
8/11/2023
興味があったので市民講座が無料で開講していたドイツ語手話の講座に参加した。講師の人から、ドイツ語手話には冠詞が無い。という話を聞いて私はとても驚いた。しかし帰り道に電車に揺られながら、そういえば、自分も冠詞が無い言語(日本語)を使っていることを思い出した。
29/10/2023
sentencestress
Migrazine 2023/1
I contribute a poetry Love is Considerable (2022) and an illustration One Day I Met the Rubber Duck on The Shore (2022) at Migrazine2023/1.
Link: AUSGABE 2023/1
Crossing Uncertainty
3年半ぶりに日本に行ってオーストリアに戻った。人間も動物も種も土も水も移動しているが、火山とかその近くで起こっている循環をまるごとよその場所に移すことは出来ないわけで。緑の色が濃い、葉っぱが分厚い、紫芋に牛乳を混ぜてつくった色みたいなとても珍しい感じの木の実が道の脇に人知れず生えていてびっくりした。硬水は飲むと骨が硬くなる感覚があるけど、軟水は口に入れると簡単に体の一部になっていった。育った文化圏を離れて暮らす画家はよく風景画を描いている。その人達の気持ちがとても良く分かる気がする。大抵の窓やキャンバスが四角形なのも納得だ。持ち運びたいけど、持ち運べないものがあるから、切り取って保管するしかない。そのジレンマを人間は手放すことができない。